細長くかつ非常に深くて、急峻な非対称断面を示す海底の窪み。
北太平洋のアリューシャン列島、アラスカ半島沖に、3,700kmにわたって連なる海溝で弧状をなす。平均幅50km。最深部は7,679m(50°51′N、177°11′E)。海溝の大洋側には顕著な海溝周縁隆起帯が見られる。ここでは、古第三紀の年代の太平洋プレートが沈み込んでいる。沈み込む速度は、東部で6cm/年、中部で5cm/年、西部では1cm以下である。プレートの沈み込みは、東部のアラスカ半島沖では島弧に対してほぼ直交するが、西方に向かって徐々に斜交し、西部では島弧に平行するようになり、トランスフォーム境界となる。[G5.02、5.03]
伊豆諸島、小笠原諸島を頂く海嶺と平行に、その東側に南北に連なる。決定地名による海溝は、北は第1鹿島海山、南端は小笠原海台で挟まれる範囲。長さ1,080km、平均の幅は90kmである。最深部は9,780m(29°12′N、142°50′E)。ここでは白亜紀前期(130-140Ma)の太平洋プレートが沈み込んでいる。沈み込む速度は9cm/年である。スラブは600km以上の深さまで沈み込んでいる。[海6302、6726]
南太平洋ニューヘブリデス諸島(バヌアツ弧をなす)の西側にある。最深部は9,175m(12°28′S、165°51′E)。全長1,200km、平均幅70km。海溝中央のエスピリツサント島沖には海嶺が衝突している。海溝には、インド・オーストラリアプレートが3cm/年の速度で沈み込んでいる。エスピリツサント島を境に南の深みを南ニューヘズリデス海溝としている文献もあるが、G5.10ではバヌアツ弧に対応する海溝をひとつの海溝としてあつかっており、ローヤルチー諸島沖より東方の溝地形に南ニューヘズリデス海溝をあてている。[G5.10]
ケルマデック諸島弧に対応する海溝。北部のトンガ海溝とは部分的に水深が6,000mより浅くなる所を境にして繋がる。最深部は、10,047m(31°53′S、177°21′W)。全長1,500km、平均幅60km。白亜紀前期(120Ma)の太平洋プレートが9cm/年の速度で沈み込んでいる。スラブの先端は750km以上に達する。[G5.10]
カムチャツカ半島中部の東沖合から発し、千島列島と平行に襟裳岬沖まで連なる。1874年にタスカロラ号に発見された。6,000m等深線でみる海溝の地形は、幅30-100kmで長さ2,000kmを越す。最深部はウルップ島沖、9,550m(44°09′N、150°30′E)。沈み込む太平洋プレートの深さは、1,200kmに達している。白亜紀のプレートが9cm/年の速度で沈み込んでいる。[G5.02、5.06]
メキシコ沖のトレスマリアス島から、コスタリカの南西のココス海嶺に至る間、約2,800km。平均幅40km。深部を連ねた海溝軸は間延びしたS字型を呈す。海溝の深さは、北部で4.000-5,000m、南部で5,000-6,000mが一般的である。最深部は6,662m(14°02′N、93°39′W)。古くは、アカプルコ海溝とかグアテマラ海溝とも呼ばれた。古第三紀-中新世の年代であるココスプレートが沈み込んでいる。沈み込む速度は、北部・中部で5-6cm/年、南部で7cm/年である。[G5.07]
南太平洋のトンガ諸島弧に対応する海溝で、サモア諸島南方沖でほぼ直角に西折れするところを除けば直線に近い配列になる。全長1,500km、平均幅55km。最深部は10,800m(23°15′S,174°44′W)。地球上で1万mを越える水深は、南太平洋ではトンガ海溝とそのすぐ南隣のケルマデック海溝で、北太平洋ではマリアナ海溝とフィリピン海溝である。白亜紀前期(120Ma)の太平洋プレートが10cm/年の速度で沈み込んでいる。スラブの先端は深さ700kmに達する。[G5.10]
琉球海溝とも呼ばれる。地形的には、南端は台湾東方沖で北端は奄美海台が海溝を跨ぐところまでである。島弧との対応でみれば、さらに北の種子島東方までのび、この間全長1,350km、平均の幅60kmとなる。海溝中部地区では、大洋底の拡大の痕跡を示すマイナーリッジ・トラフ地形と海溝の形成に伴ってできた地塁・地溝地形とが重なって、格子状の特異な地形がみられる。最深部は、7,460m(25°10′N、128°20′E)。古第三紀のフィリピン海プレートが5cm/年弱の速度で沈み込んでいる。沈み込むスラブの深さは北部で200km、南部で250-300kmである。[海6302、6315]
本州東岸を縁取る。北端は襟裳岬沖で千島・カムチャツカ海溝と接する。南端は第1鹿島海山が海溝を跨ぐところまでであるが、島弧との対応でみれば房総沖の三重点の水深9,200mとなる。ここまでの全長800km、幅100km程度。海溝海側斜面には、海溝軸にほぼ平行して典型的な地塁・地溝地形が発達している。海溝の水深は6,000m-8,000mと段階的に南に深くなる。決定地形名に基づく最深部は、第1鹿島海山の北方、8,020m(36°04′N、142°45′E)。ここでは、白亜紀前期(125Ma)の太平洋プレートが沈み込んでいる。沈み込む速度は10cm/年。スラブの深さは600km以上に達する。[海6312]
南太平洋ニューブリテン島とブーゲンビル島の南側に位置する。全長1,000km、平均幅50km。ブーゲンビル島南方の部分はブーゲンビル海溝とか、北ソロモン海溝と言われたこともある。最深部8,940m(6°19′S、153°45′E)。鮮新世以降の活動を続けるソロモン・プレートが、6cm/年の速度で沈み込んでいる。沈み込むところの深発地震面は、500-600kmの深さに達している。[G5.06]
北西太平洋のパラオ諸島の東側に沿う海溝。全長400km、平均幅40km、最深部8,054m(7°52′N、134°57′E)で、海溝としては小規模である。最北部の海溝底は、水深8,000-8,040mと平坦(幅9km、長さ23km)であるが、これより南では狭谷になる。海溝陸側下部にわずかに付加体がみられる。ここには、太平洋プレートが10cm/年の速度で沈み込んでいる。なお、海溝の南端を水深5,000m以深の溝で追えば、1°30′N付近まで、さらに400kmほどのびる。[G5.06]
南太平洋サンタクルーズ諸島東方にあり、北に張り出した弓形を呈す。1958年ソ連の観測船によって発見されたことからその名がある。その西方の凹地を含め東メラネシア海溝とも呼ばれ、全長1,300km、平均幅50km。最深部は、6,150m(10°27′S、170°17′E)。[G5.10]
フィリピン群島など(ルソン島-モロタイ島)の東側に沿う海溝。古くはミンダナオ海溝とも呼ばれた。全長1,400km(溝地形を追跡すれば2,000km)、平均幅約60kmである。最深部については発見した船名をつけ、エムデン海渕などと呼ばれていたが、現在最も信頼のおける最深部はケープ・ジョンソン海渕の10,057m(10°39′N、126°36′E)である。古第三紀のフィリピン海プレートが、7cm/年の速度で沈み込んでいる。スラブの先端は深さ100-150kmに達する。[G5.06]
南米西海岸に沿う長大な海底の溝。一般にはナスカ海嶺が海溝に迫るところを境に北側をペルー海溝、南側をチリ海溝(古くはアタカマ海溝と言われたこともある)と呼ぶことが多い。最深部はチリ海溝側にあり、最深部は8,170m(23°28′S、71°21′W)である。両海溝の全長は、5,200km。平均幅100km。チリ海溝南部には中新世以降(10Ma)のナスカプレートが6cm/年で沈み込んでいる。[G5.11]
マリアナ諸島の東側に沿って弧状に張り出した海溝。全長2,550km、幅70km。最深部については、一時11,000mを越える水深の報告もあったが、測量船「拓洋」の調査により、最深水深は10,920m±10m(11°22′N、142°36′E)と確定した。この地点は、1951年に最初に発見したチャレンジャー八世号を記念して、チャレンジャー海渕と命名された。地球上で最も深いところである。マリアナ海溝にはジュラ紀-白亜紀の太平洋プレートが、11cm/年弱の速度で沈み込んでいる。スラブの深さは1,200km付近に達している。[G5.06]
南太平洋サンクリストバル島の南にある。最深部8,322m(11°16′S、163°02′E)。全長600km、平均幅40km。[G5.10]
南太平洋ローヤルチー諸島の東からフィジー諸島南西に至る海溝。全長700km、平均幅50km。最深部は6,500mを越す。[G5.10]
ヤップ諸島の東側に沿う。全長700km,平均幅40km、最深部8,650m(8°25′N、137°50′E)である。マリアナ海溝との会合部付近にはカロリン群島をのせる海膨が衝突している。[G5.06]